はじめに
私は小劇場の演劇が好きです。
小劇場演劇というのは、一般的な定義づけはされていないものの、小さな劇場でのお芝居だけでなく、演出家を主宰としたお芝居のことをいいます。
また、娯楽的要素が強い商業演劇とも違います。
大きな劇場でやるミュージカルとか、思わず歌ったり踊り出したくなるような楽しいお芝居ではありません。
小劇場の多くは、主宰の伝えたい思いが詰まっていることが多いです。
風刺がきいていることもあるので、エンターテインメントとは違います。
どちらかというと、絵画のようなものだと思っています。
私は大学で小劇場の演劇を専攻していました。
大泉洋の所属しているチームナックスが好きで、卒論もナックスと北海道の人情味のある小劇場のお芝居のことを書きました。
また、応援していたジャニーズJr.のAぇ! groupの冠番組が、関西の小劇場の主宰を招いてお芝居をするものだったこともあり、関西のお芝居を観ることも増えました。
その番組、THE GREATEST SHOW-NENは3月9日をもってレギュラー放送が終了となってしまいます。
だいすきな番組でした。
小劇場のお芝居は、有名タイトルを使うこともないし、有名な俳優も出ない、おまけに小さな劇場で行われるので、正直取っ付き難いです。
でも、新劇や商業演劇では得られないエネルギーがあります。
だからこれからもずっと続いて欲しい。
そんな小劇場のお芝居へ想いを馳せながら観た公演が、ソフトボイルドの3周年記念公演「舞台 夜明」。
よくある話ですが、ソフトボイルド記念公演と言っても、全員が劇団員という訳ではなく、他の劇団や俳優を客演として招いての公演です。
かという私も、ソフトボイルドのことは知らず、客演として招かれていた小坂涼太郎という俳優目当てで観に行きました。
読書においても、好きな作家中心に読んでしまうし、観劇においても、好きな劇団中心に観てしまう私にとっては、こういう機会は有り難いものです。
おかげで、すごくいいお芝居が見れました。
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舞台 夜明
描かれるのは、長州藩と薩摩藩が未だ対立していた時から、禁門の変を経て、薩長同盟を結び倒幕まで。
幕はなく簡易的なセット、スピーカーからひび割れるBGM、わずか167席の小さな劇場に響く役者の大きな声。稽古を重ねたであろうテンポのいい会話と間。そして整った殺陣。
観客も息をとめてしまうような静と、
思わず体が動いてしまいそうになる動と。
お金がかかっていなくても、
名が知れていなくても、
そんなことがどうでもよくなるくらい。
志を持ってお芝居をしている役者だからこそ
志を持った役を演じられるんだ。
私は役者のことを媒体だと思うことがある。
役者のことを好きだと、どのシーンの演じ方が良かっただとかいう見方をしてしまいがちだけれど、きっと彼らが見てほしいのは自分じゃない。
それならば、我々観客も役者ではなく、役者を介した人を見たい。
時に役者は、私達は決して会うことが出来ない偉人に会わせてくれる。
役者自身が自分の演じる人に敬意を持っていれば、観客にも自ずと生まれてくるもの。
それはどんなに上手く演じようとも観客には分かるもので、誤魔化しようのないもの。
観劇中ふと、
今の日本に坂本龍馬がいたら
と考えた。
解決策とは時に、常識的に考えて難しいとされることの中にあるもので。
彼らが身を犠牲にしてまで得たものを、環境を、私達は驕らず守り続けているだろうか。
そんなことを思いつつ、散っていく藩士に涙した後のカーテンコール。
座長は
この物語は、少し脚色はあるものの史実で
多くの偉人が奮闘し、命を落としていった。
時代が変わって現在
流石に刀を持って戦うことはないけど、自分たちなりの向き合い方があるよね。
選挙へ行こう!
って話をしていた。
私はずっと、
先代が汗と涙と、時には血を流してまで獲得した権利を、現代人の私達がみすみす手放してしまうことは悲しいことだと思っていて。
はじめて同じ意見を持った人に出会えたと思った。
そして、お芝居で伝えているんだと思うと本当に格好良くて。
こういう人に出会うおかげで私は驕らずにいられるし、明日も頑張れるのだと思う。
ある程度の命が保証されたこの時代、この国に生きているのだから自分なりに奮闘し続けたい。
感情を抑える理性と、相手に自分の考えを正しく伝えられる言語化する力と
物を広く見るための知識と想像力
少し調子に乗ってしまった時に、はっとされるようなお芝居が観たいから、私はまた小劇場のお芝居を観るんだ。