いじめられっ子はなんでも出来る。
人に頼らず、自分でなんとかするしかない環境に慣れている。
例えば、背中のチャックを自分であげられる。
どの食べ物も好き嫌いなく美味しく食べられる。
虫だって平気。蚊もゴキブリも逃がす。
小さい時からよくいじめられていた。
幼稚園の時は「ご飯を食べるのが遅いから来ないで」と仲間はずれにされることが多かった。
人よりちょっと感受性が豊かで、嫌われ者の虫や野菜を、自分がされているのと同じように排除するのが嫌なんだったと思う。
とはいえ、そんなに派手ないじめではなかった。
キャラクターのキーホルダーの腕を折られたり、仲間はずれにされたり、物を隠されたり。
印象的だったのは、小学校二年生の時に「かごめかごめを百回やったら、中の人消えるらしいよ」って言われて実験台になったこと。
「消えないじゃん」と言われても涼し気な顔をしていた彼女は、他の子と比べて随分大人びていたのだと思う。
無理に集団でいてもそんな扱いを受けるから、一人でいることが多くて、本を読むことや、絵を描くことがだいすきになった。
帰り道には、お母さんにお花を摘みながら帰った。
そして人を見る目を養った。
表情と笑い方を見れば、どんな学生時代を送っていたか分かる。どんなに隠したっていじめられっ子には分かる。
だから彼女から好かれている人たちよ。
彼女はあなたの学生時代を知らないかもしれないけれど、あなたが大切にしているものを守るために、きちんと過ごしてきたことを知っている。
やがて、いじめられっ子はいじめられなくなった。いじめっ子になることもなかった。
人に笑われるんじゃなくて、人を笑わせられるようになった。
なんでも出来ることは彼女にとってポジティブなことではないけど、ネガティブなことでもない。
福岡から上京し営業職として働いた。
ひとり暮らしも大したことはない。
体力があって力も強い。握力も40kgはある。
背も高いから高いところに手が届く。
テレビやプレイヤーの接続、家具の組み立ても説明書がなくても出来る。
大抵の事は自分で解決できる。
小さくて力が弱くて、甘え上手な女の子と比べると、可愛げはないと思う。
だけどその分、人を助けられると思う。
きっと。